ジュニアホッケーゲーム
昭和41年(1966)/エポック社
憧れの名機
小学5年生の正月に買い与えられたサッカーゲームに上達するとともにやがて飽きてきた筆者は、やがてそれを似た構造を持つホッケーゲームに興味を持ち始めた。
小学校6年生、12歳にもなってまだこんなオモチャを欲しがっていたのかとお思いの方も多かろうと存ずる。
しかし当時の小6はまだまだ子供。
ところがその後1年もしないうちに中学に進学、筆者が通っていた小学校とは別の超有名校から大挙してやってきた秀才たち(中には悪ガキもいたが)の大人びた振る舞いに愕然として、一気に小学生気分が抜けたことを覚えている。
現にこの1年後には早くもフォークギターに手を出すのだ。
たった1年間でオモチャからギターへ、まあ成長期というか思春期なんてそんなものだろう。
私情はともかく本題に戻ろう。
本機は地元玩具店のショーウィンドウ(ああこれも懐かしい響きだ)に飾られていたのを見て、欲しくて欲しくてたまらなかった一品。
親にねだるも「よく見なさい、作りは今持っているサッカーゲームと同じでしょう」と一蹴された。
そりゃあ基本的なサイズや構造はご指摘の通りまったく同じですよ、でも扱うのがボールではなくパックなんだよ(ところでパックって何?)。
ブリキ選手人形も剣道みたいな防具を身につけてカッコいいでしょ?
だからサッカーゲームとは全然違うんだよ~、買ってよ~(泣)。
そこでシュートだ、ハセスン
玩具店の店頭で号泣してからかれこれ38年の歳月を経て、例によって「リベンジ買い」に成功したのが本機。
ネットオークションの出品者から送られてきたカビ臭い外箱を開け、白を基調とした美しいリンクが目に飛び込んで来た時の感動と充足感は、その後25年以上を経た今日でも決して忘れることはできない。
しかし、上の写真のブリキ選手人形をよく見ると、スティック下に4、ハセスンと拙い文字で書かれている。
つまり以前の所有者は子供の頃、本機にあまりにも熱中するあまり、選手ひとりひとりに番号と名前を付与していたのだ。
そこまで愛した本品を手放さざるを得なかった事情に関しては知る由もないが、それが巡り巡って私のような傲慢極まりない大人のリベンジ買いの餌食になってしまったかと思うと、いささか忸怩たる思いを禁じ得ない。
よし、これからは筆者が代わって諸君たちを操作するだけでなく、声を枯らして応援しよう。
今だハセスン!…でもハセスンて誰?(今さら調査不能)。
どこか違和感
こうして手に入れた夢にまで見た名機だが、試しに遊んでみるうち、ふとした違和感に囚われた。
筆者は恥ずかしながらスポーツファンではなく、従ってホッケーやサッカーの現場観戦歴もなく、ルールにも詳しくない。
しかし、実際のアイスホッケーリンクはどこか違うような気がする…それ気づいたのはもっと後、欧州を代表する大メーカーの名機を手に入れてからであった。
しかしそんな細かいことは今となってはどうでもよい。
あの日玩具店のショーウィンドーでキラキラと輝いていた憧れの名機が、中古とは言え今は手元にある。
それだけで十分ではないかと思わせるだけの美しい外観が、ここにはある。