電動ワールドカップサッカー
発売年不明/トミー
珍しいトミー製
トミー(当時)が満を持して?(未確認)世に送り出したサッカーゲームの自信作。
発売年は不明ながら外箱にSTマークが印刷されているので少なくとも昭和46年(1971)以降と推定できる。
実は本機、20年以上前にネットオークション経由で入手したものの、一度も箱を開けないまま、その後長らくトランクルームにしまいこんでいたもので、このたびの探索?でその存在が明らかになった。
全体のサイズは34cm×20cmだが、レバー部分を除いた、緑色のフエルトが貼られたピッチ部分は22cm×14cmと、極めて小型だ。
しかし上の写真を見る限りでは、むしろ逆に、ピッチが広々としているように見えるかもしれない、そのわけは-
スケボーサッカー
実は選手人形も高さ23㎜と超のつく小型。ボールに至っては直径6㎜にも満たない(したがって紛失したとき用の予備が5球も付いている)。
ピッチのみならず選手人形やボールも小型化していることにより、相対的なサイズバランスが整っているため、写真からではピッチの小ささを認識しづらくなっている。
しかし小さいからといって侮ってはならない。
写真からわかるように選手人形はなかなか凝った作りになっている。
プロポーションはリアルだし、黄色人種らしい肌の色合い、整髪料ベッタリの黒々とした頭髪といった細部まで丁寧に作りこまれている。
強いて難点を挙げるとボールを蹴るのが選手の足ではなく、彼らが乗る細長い状の板である点だが、スケボーを操りつつボールを追う新しいスポーツと捉えれば逆に興味深い。
電動プレー
本機の最大の特色は、ゴールキーパーを除く選手が電動で動くという、これまでにない極めて画期的なシステム。
通常の機種では棒状のレバーの先を手で握ってを押し引きすることで選手を前進/後退させるのだが、本機は手元のレバーを前後に押すだけで選手が前後に移動してくれる。動力は単二電池2本。
機械音痴の筆者にはその構造への興味は特にないが、トミー開発陣の技術力には驚嘆せざるを得ないし、後発の不利をものともせず敢然とサッカーゲーム市場に参入するに十分値する同社の斬新極まりない独自性には畏敬の念すら覚える。
しかし最大の問題は、ただ単に選手が電動で動くという物珍しさにとどまることなく、実際に遊んでみてゲームとしてその魅力を堪能できるか、その点にこそ集約されよう。
まず気になるのが音。のべつまくなしジージーというモーター音が鳴り響き、ハッキリ言ってやかましい、うるさい。
下の動画では一連のシリーズと同じBGMを使用しているが、実際には真夏のセミの大合唱のごとき騒々しいモーター音が鳴り続けている。
次に、選手の前後の動きを電動に委ねることにより、従来のレバー押し引きによる、プレイヤーが直接選手人形をコントロールしているという実感が得られづらい。
さらに、これが致命的であろうが、何もかもが圧倒的に小さいので選手が広いピッチを駆け巡るという臨場感に欠ける。
特にボールが小さすぎるので、プレイヤーは常にボールの行方を目を凝らして注視しなければならない。
「あ、ボールは今そこにあるのね、それではこのレバーを前に倒して選手をボールの位置まで移動させて…」
こんな悠長なプレーではサッカーならではのスピードとスリルを味わうことは極めて難しいと想像できよう。
以上のことから、本機はアナログサッカーゲーム史上に燦然と輝く稀代の珍機という位置づけが妥当であるように思う。
ただし一見したところのリアルさは十分に鑑賞に堪えよう。サッカーファンが自室に飾っておくと訪れた友人たちから羨望の眼差しを集めるかもしれない。
なんといっても、単なるインテリアにとどまらず、遊ぼうと思えば遊べる点がユニークだ。
もっとも、それでは本末転倒であるが。