アストロウォーズ
平成元年(1987)/エポック社
舞台は宇宙だ
昭和51年(1976)の五代目を最後に久しくアナログゲームシーンから姿を消していた昭和を代表する名機・魚雷戦ゲームが、移り変わった平成の世に突如として蘇った。
その名も「アストロウォーズ」今度はなんと宇宙空間が舞台。いったいなんなんだこの唐突すぎる展開は?
宇宙空母と光子ミサイル
従来の灰色だった戦艦は赤と黄色のケバケバ…もとい、カラフルな宇宙空母に大変身。
当然魚雷も光子(みつこ、ではなく、こうし)ミサイルへと、ネーミングだけは華麗なる変身を遂げた。
ちなみに光子とはその名の通り光の粒子で、物理学における素粒子の一種であることのこと。光が鉄でできていると初めて知った。
しかし、紹介の冒頭からあまり茶々を入れるのも憚れるが、本機が発売された時代は、格段の進歩を遂げた特撮技術による宇宙ものの海外映画が大ヒットを記録するだけでなく、国内でも宇宙空間を飛行する戦艦や鉄道のアニメが高い人気を博している。
つまりこの時代の子供たちにとってすでに宇宙は遠い憧れではなく、むしろ身近な存在になりつつあると言えよう。
そのような状況下で、赤や黄色の小型プラスチック製宇宙空母や鉄球製の光子ミサイルが、果たして彼らにリアリティをもって好意的に迎えられたか、たいへん失礼ながら、はなはだ疑問だ。
話を戻そう。
実は本機には画期的な機能が搭載されている。上のパラパラ写真にある通り、宇宙空母が左右に動き、光子ミサイルの攻撃を避けることが可能になっている。
この機能により敵の攻撃をうまく避けることもできるであろうが、逆に墓穴を掘ってこちらから光子ミサイルに当たりに行ってしまう可能性も十分にあり得る。
それにしても、返す返すも惜しい。
この回避行動システムが以前のバージョンに備わっていたなら、攻撃側と守備側の間に、野球盤ゲームに見られるようなある種の駆け引きが可能になっていて、プレイヤーは相手の動きを読むことで、ゲームを優位に進めることができたかも知れぬ。
つまり単純な「当てっこ」に終わらず、心理戦が展開される可能性があったのだ。そうすれば当時の私をはじめとする飽きっぽい少年たちの心を、今少しの間繋ぎとめておくことも十分できたであったろうと思われる。
恐怖のブラックホール
本機にはさらに驚愕すべき新機能が加えられてる。
それが盤上に見える、紫なのにブラックホールだ。
このブラックホール、なかなか強力な磁石でできていて、付近に強烈な磁場を発生させ、なんと光子ミサイルの軌道を変えてしまう。
なんだかんだとケチをつけてしまったが、結局のところ、従来からある自社のリソースを新たな時代に活かすべく弛まぬ創意工夫を続けるエポック社開発陣の底力を、本機においてもここまでまざまざと見せつけられてしまっては、もう脱力…失礼、もとい、脱帽するよりほかはない。