魚雷戦ゲーム(五代目)

昭和51年(1976)/エポック社

魚雷戦ゲーム(五代目) 全景

原点回帰した五代目

昭和42年(1967)の初代機発売から9年、昭和51年(1976)に投入された、純粋な魚雷戦ゲームとしては最後となる五代目。
(2005年にリバイバル発売された魚雷戦ゲームは本機のデザイン・機能に、変態版「アストロウォーズ」の一部機能を追加した合体版なので、当サイトへの掲載は見送ることにする)

この五代目の開発に際し、恐らくエポック社開発陣の間では、(筆者だけに)悪名高い問題作・魚雷戦ゲーム四代目の(筆者が勝手に断定する)失敗点についての議論が沸騰したのはほぼ間違いなかろう。

その証拠に、本機においては四代目において改悪されたいつくかの問題点が、まるで何事もなかったかのように、シレっと見事に元に戻されている。


魚雷戦ゲーム(五代目) パッケージイラスト

五代目にみられる原点回帰はパッケージも同様だ。
本機の外箱には二代目以来となる戦艦のイラストが復活した。

しかしそこに描かれた戦艦のイラストは、初代二代目における、ともするとおどろおどろしく映るリアル大海戦ではなく、波を蹴立てて大海原を行く戦艦とその上空を飛ぶ爆撃機?が劇画タッチで描かれている。

それでも三代目四代目の味気ないパッケージデザインに比べれば、はるかに秀逸だ。



魚雷戦ゲーム(五代目) 筐体の色・形状

筐体及び海面の再変更

まずは筐体。

形状そのものは四代目のそれを継承しているものの、その色は二代目~三代目において採用された「戦艦の甲板を表す灰色」が戻ってきた。
やはり筐体はこの色でないと「艦隊勤務」の雰囲気が出ない。


魚雷戦ゲーム(五代目) 海面の色を表す青色のプラスチック版

そして海面の色を表すプラスチック板も、まるで高級リゾート地に来ているのかと錯覚させられるような四代目の、まるで海底のサンゴ礁まで見えそうなほぼ透明に近い薄い水色から、こちらも三代目で採用された、程よい濃さの青色がめでたく復活した。

以上の2点からも、開発陣が四代目の失敗とその原因を真摯に反省していることが見て取れる。

なにも遮二無二新規性を追い求めるのではなく、たとえ既発製品において一度採用されようが、そんなことは構わずに良い点は正々堂々と継承しようという潔さ・清々しさが感じられ、大いに好感が持てる。



魚雷戦ゲーム(五代目) 魚雷発射装置連動型リフレクトスコープ

連動型リフレクトスコープ

そんな中、魚雷発射装置だけはいささかチープな、歴代最小型である四代目と同じものが継続採用されているが、そのマイナス点を補って余りあるのが本機の目玉機能「魚雷発射装置連動型リフレクトスコープ」の新規搭載だ。

かつて三代目において一度実装されたリフレクトスコープは、大型の魚雷発射装置の中央部に搭載されていたが、本機においては発射装置から完全に独立分離され、潜水艦の潜望鏡を横向きにしたような独特の形状で存在感を放っている。


魚雷戦ゲーム(五代目) 魚雷発射装置連動型リフレクトスコープ

しかも驚くべきことに、このリフレクトスコープは魚雷発射装置と連動している。

つまり、スコープ左右にある取っ手を動かすと、魚雷発射装置が一緒に動くのだ、よく考えたなエポック社!


魚雷戦ゲーム(五代目) リフレクトスコープのアップ

したがってリフレクトスコープが敵艦の姿を捕捉したら、あとは魚雷発射装置のボタンを押すだけで、魚雷は水面下を目指す敵艦目がけて潜行、見事命中して一発撃沈!…

と言いたいところだが、ことはそう簡単には運ばないのが世の常だ。

名機・三代目におけるリフレクトスコープは大海原を航行する敵艦隊の姿を比較的容易に捕捉できたのだが、本機においては敵のスコープが乗った甲板ばかりがよく見えて、その手前にあるはずの敵艦隊の姿を正確に捉えるのがいささか困難、ざっくばらんに言えば「甲板がじゃまして敵艦が見えにくい」のである。

もっと言えば、本来、敵艦隊に上には空が広がっているべきところ、そこに映るはずのない敵艦の甲板が大きく映り、かなり興趣を削がれる。

今回本機に実装された魚雷発射装置から独立した潜望鏡タイプのリフレクトスコープを含めた、問題作・四代目から継続採用されている「甲板ギミック」のおかげで「リアルな海戦では決して見えないはずのモノ」がスコープに映ってしまうという構造的な問題が発生する結果となってしまったことは残念極まりない。

それにも増して、果たしてこの五代目魚雷戦ゲームは昭和51年当時の子供たちにどれだけ支持されたのかという疑問も残る。

この時すでに戦後30年が経過し、戦闘の舞台は海から空へ、戦艦同士の海戦からスピーディーな戦闘機による空中戦へと移行している。
恐らく当時の子供たちは「魚雷・海戦」と聞いてもピンとこなかったのではないか。

本機を最後に魚雷戦ゲームは一応その歴史に幕を閉じるが、この13年後、思わぬ形で復活を遂げることになろうとは、この時点では当のエポック社開発陣でさえ、想像もつかなかったであろう。

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