パーフェクトボウリングジュニアーS型
昭和46年(1972)/エポック社
人気の小型機種改良版
「パーフェクトボウリングジュニアー」の項で指摘した通り、同機はピンセッターの構造に少々不安点があった。
その点を驚くべき手法でもってクリアしたのが、翌年に発売された本機。
ちなみに商品名のS型のSが何を意味するのかは今もって不明。いくら調べてみても「改良する・改善する」を意味するSから始まる英単語は見つからない。ひょっとして単にSettingのSか、あるいは第2版を表すSecondのSか、まあどっちでもいいけど。
逆転の発想
従来機はセット完了後、ピンセッターを上方に持ち上げる構造であったが、本機においてはその発想を逆転、ピンをセットし終えるとセッターが沈み込むという、本機の上記機種はおろか、実際のボウリング場にも見られない極めて斬新なシステムを採用している。
これならゲーム中、不意にピンセッターが降りてきて白熱の好試合に水を差すというアクシデントも100%発生しない、さすがエポック社!
美しいレーン
水色のプラスチック筐体に、本物そっくりにスパットが印刷された木目のような(ブリキだけど)レーン。
ボウリングゲームの醍醐味はなんといっても「家庭にいながらにして手軽に”ボウリング場にいるような感覚が味わえる”」点に尽きよう。
しかし、この点を今のお若い方に「感覚的に」ご理解いただくのは、正直言って少々難しいかもしれぬ。
これはあくまで個人的見解に過ぎないが、今日のボウリング場のイメージは、どちらかというと「元気なシニアの社交場」という色合いが強いように思える。
しかし、遠く1971年のあの日、ボウリング場と言えばまさに娯楽の殿堂(このフレーズ自体がすでに古いが)で2時間待ち、3時間待ちは当たり前。
休日ともなると最新流行のファッションに身を包んだ、ナウなヤング(完全に死語)たちのグループが歓声・嬌声を上げ、ペプシコーラやミリンダグレープを瓶から口飲みしつつ、自分たちの投球に一喜一憂していた。
そんなボウリング場は反面、特に小学生以下の子供たちにとっては教育上必ずしもよろしいとは言い難い。
そこで世のお父さんたちは、可愛いわが子の「今度の日曜日、ボウリング場に連れていって!」というおねだりをなんとかしてかわすため、少ない小遣いをやりくりしてボウリングゲームを買い与えた。
そして毎週土曜日の夕食後、食器を片付けたちゃぶ台の上で、家族揃ってボウリングゲームに興じるのであった。
しかしそんなとき、スパットの印刷も木目もない真っ赤なプラスチックのレーンでは、ボウリング場にいるという気分が今ひとつ盛り上がらない。
昭和の子供たちにとって、やはりボウリングゲームは本物のボウリング場らしくあらねばならなかったのだ。
エポック社のボウリングゲームはその点完璧で、だからこそ昭和っ子の憧れ、高嶺の花であり続けたと言えよう。