フレンドボーリング
発売年不明/バンダイ
小型ながら本格的
全体の長さ60cm×幅13.5cm、レーン全長50cmと小型サイズ。
それでも、印刷された木目とスパットが実に美しい。
筐体はブリキではなく成型プラスチック。
自宅で家族や友人とボウリングゲーム楽しむためには、なんといっても「ボウリング場にいる」という、あの独特な臨場感・高揚感が必須であり、それには「レーンの木目とスパット」の演出は不可欠だ。
本機は小型ながらその点をしっかりとクリアしている。
リアルなピンセッター
ボウリングゲームにおけるもう一つの大切な要素は「ピンセッター」だ。
投げる前に10本のピンが自動で並べられ、倒れたピンを掃き出した後、残ったピンが再び上から下りてくる。
この、いかにもメカっぽいピンセッターにこそ、昭和の子供たちのボウリングへの憧れが集約されていたと言っても過言ではない。
個人的には小学校6年の時さんざん遊んだ思い入れのある機種とはいえ、三角定規に空いた円の中に1本ずつ手動でピン置いていく方式の「ファミリーボーリング」のピンセッターには、今思えばリアリティのかけらもない。
その点、本機におけるピンセッターは小型ながら本格的だ。
まず最初に、上の写真のようにピンセッターを持ち上げて後部に反らせ、バネで小さな穴を少しだけ広げ、そこにピンの頭部を挟み込んでいく。
ピンセットが完了するとピンセッターをレーン上に戻し、
再度バネでピン頭部をつまんでいる穴を広げ、ピンを離してまた持ち上げる。
この方式だと、本物のピンセッターと同じように、ピンが下りてくるというリアルな醍醐味を味わうことができる。
第一投の後、すかさずピンセッターを下ろして倒れなかったピンを摘まみ上げる。
さすがにスウィープ機能までは付いていないので倒れたピンを手で除去した後、再度ピンセッターを下ろして残ったピンを離す。
面倒と言えば確かに面倒だが、この「所作」こそが「在・ボウリング場感」を、いやがうえにも盛り上げてくれるのだ。
投球装置にも独自色
投球装置は選手人形ではなく、かといって滑り台方式でもない。
所定の位置にセットして、後ろのツマミをポンと弾けば、
ボールはピンめがけて勢いよくレーンを転がっていく。
この投球装置も実にシンプルかつリアルな「リリース感」を味わうことができる。
ちなみにこの投球装置、向きは変えられるがレーンの左右を移動することはできない。
発売年代・顧客層の推定
では本機の発売年代はいつごろか?
そして対象年齢は何歳くらいか?
まず前者の疑問の解明から取り掛かろう。
とはいえいろいろと調べてみたが、残念ながら現時点では公式の記録を発見することはできていない。
しかし、他のボウリングゲームの稿において幾度となく言及している「STマーク」が外箱に付されていないことから、少なくとも日本全国に突如として熱狂的なボウリングブームが巻き起こった昭和46年(1971)以前の発売であろうことは間違いない。
対象年齢についてのヒントは商品の外箱に印刷されている、上の写真をご覧いただこう。
サングラスをカッコよく頭に乗せているブロンドヘアのオネイサン。
今まさにボールをリリースしようとしているもう1人の若い女性は当時最新流行のパンタロンルック。
それを見守る、右手にスコアシート、左手に鉛筆を持つオニイサン、首にオレンジのバンダナ(スカーフ?)を巻いている。
(タートルネックの長袖Tシャツという可能性も否定できないが)
どこからみてもこの3人、昭和45年ごろの「ナウなヤング」そのものだ。
左側には商品写真とともに
「本物とそっくりなレーン」
「本物とそっくりにプレー」
とリアル感を強調するコピーが踊る。
(しかも"本物"にルビが振られていない)
さらには小さい子供には少なからず難しいと思えるピンセッティングやツマミを弾く投球装置。
以上のことから本機は子供向けのオモチャというよりは、当時流行し出したボウリングに興味を持つ若者に、そのネーミングの通り「フレンド」たちと気軽に「在・ボウリング場感覚」を楽しんでもらおうという意図のもとに製作・発売されたものではなかろうか。
しかし、小型ながらリアルで実によくできていた本機も、この少しあとの爆発的ボウリングブーム到来と時を同じくして発売された、ライバルメーカーの人気機種には太刀打ちできずに早々に市場から消えてしまい、半世紀以上を経た今日でも依然として歴史の闇に埋没したままだ。