ゴーゴーベースボール

昭和52年(1977)/ミウラトーイ

ゴーゴーベースボール 全景

球が宙を飛ぶ野球盤

ソフビ怪獣人形などで知られるミウラ(三浦トーイ)が発売した唯一の野球盤。

49㎝四方、スタンドを含めた両翼63㎝、バックスクリーンから本塁まで52㎝と、サイズで分類すれば中型といったところか。

本機の特長はなんといっても投球が従来のようにゴロではなく「宙を飛ぶ」こと。
しかもそれを投ずるのもこれまでのような「装置」ではなく「人形」だ。

(筆者註:現在エポック社から発売中の「3Dエース」なる野球盤も投手人形が宙を飛ぶボールを投げるようだが、あいにく「令和」の野球盤には興味がないため当Webでは言及しないので悪しからず)

本サイトを熱心に読み込んでくださっているファン?の中は、
「確か以前にもこのように球が宙を飛ぶ野球盤があったような…」
とお思いの方もいるだろう。

ご明察。

実は、球が宙を飛ぶ野球盤自体は本機が最初ではない。

野球盤黎明期の昭和35年(1959)に当時の万代屋から発売された「ビーシーの野球ゲーム」も本機同様、投手人形が宙を飛ぶ球を投げた。
(ちなみに同期は2022年11月1日放送「開運!なんでも鑑定団 第25回おもちゃ大会」で紹介された)

しかし投球装置の構造は大きく異なる。

「ビーシー」が投手人形をレバーで引っ張り、戻ろうとするバネによる人形の回転力を利用して投球するのに対し、本機は投手人形の右腕がゼンマイ仕掛けで球を放出する仕組みとなっている。



ゴーゴーベースボール ゼンマイ仕掛けの投手

山なりボール

守備位置についている野手たちの2倍以上の身長を誇る大巨人の如き投手人形が繰り出すのは、残念ながら剛速球ではなく山なりのスローボール。

ちなみにこの投手人形、バックスクリーン裏にあるレバーを操作することで体の向きが多少が変わり、内外角に投げ分けることができる。



ゴーゴーベースボール 棍棒を振り回す打者

棍棒バット

一方、迎え撃つ打者が手にするのはまるで棍棒のようなぶっといバット。

バックネット(ないけど)裏にあるレバーを引くと打撃体勢に入り、レバーを離すと豪快なスイングを披露する。
ちなみに左右両打席でバッティングが可能で、打者人形も左右それぞれ用意されている。

とはいえ、宙を飛んでやってくるボールは速球ではなくスローな山なりとはいえ、タイミングを合わせるのが実に難しく、バットに当てることさえままならない。
下の動画では筆者が投手・打者の一人二役をこなしたため、投球のタイミングが計れたものの、それでも10球中8球でバットは空しく空を切った。

(筆者註:よく考えれば本機は投球レバーが丸見えのため、打者は容易に投球タイミングを計れるのだった、それでも空振りの山)

一方、ボールは発泡スチロールのように軽いので、ひとたび当たれば長打は必至。
内外野に散らばる選手たちの頭上を軽く超えるか、運が悪いと下の動画のように直撃してしまう。

さぞかし場外ホームラン連発かと思いきや、左右両翼の外野スタンド上一面に設置された漆黒のボードがそれを阻む。

しかしその板に当たってグラウンドに落ちた打球の判定はどうなるのか?
残念ながら手元に取扱説明書がないのでルールの詳細は不明だが、せっかくボードに当たったのならホームラン扱いにしてほしいところだ。

ともかく、それまでほとんどなかった「球が宙を飛ぶ」という画期的な特長を備えた本機がどれほど売れたのかは不明だが、今はなきミウラがこれ以降野球盤を発売しなかったことからも、その結末は推して知るべし。

本機のような遠く昭和の歴史に埋もれた悲運のアナログゲームを発掘し、令和のデジタルな今日に細々と伝えることが老兵の残された役割だと、誰に頼まれたわけでもないのにひとり勝手に使命感に燃える今日このごろ…

投手が宙に浮く球を投げる様子は下の動画でご覧いただけるが、20年以上前に制作していた、当サイトの前身となるホームページ「野球盤道場」においては、当時youtubeをはじめとする動画投稿サイトがまだ存在しておらず、動画ではなくパラパラ漫画を掲載していた。

「投球が宙を飛んでやってくる」本機の画期的な機能をなんとかして実際に見せたいという思いで制作したこのパラパラ漫画、当時としては涙ぐましい労作だし、昔の名残りを今にとどめておくためにも、恥を忍んでここに紹介しておきたい。

ゴーゴーベースボル:投球装置

ゴーゴーベースボール:打球装置

■2023.03.09追記:

当初、本機の発売年は不明だった。

ところが本日、別機種の発売年代特定のため特許情報を検索していて、偶然下記の実用新案登録願を発見。

ゴーゴーベースボール:実用新案登録願①/ミウラトーイ
ゴーゴーベースボール:実用新案登録願②/ミウラトーイ
ゴーゴーベースボール:実用新案登録願③/ミウラトーイ

上に描かれている投球装置は本機のそれそのものだ。
従って本機は昭和52年(1977)の発売と特定するに至った、めでたしめでたし。

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