富士野球盤C型
昭和35年(1960)/河田
富士ブランドの小型サイズ
同じ昭和35年(1960)発売のA型、B型がいずれも約52cm四方であるのに対し、本機は39.5cm四方と、およそ二回りほど小型。
もっとも、サイズ以外では、ある1点を除けば、捕球穴の位置及び形状、盤面に描かれたほのぼのとした選手イラストも同じだ。
勝手に変化球
ではA、B型との「ある1点の違い」とは何か。
本機の外箱には「カーブのつく」と書かれているものの、投球装置をよく見ると、そこには当然あるべき、カーブをかけるためのコントロールレバーがない。
A型、B型には、形状と位置はそれぞれ異なるものの、変化球をコントロールするレバーが設置されている。
それに対してこのC型、投球レバーだけでいったいどうやすればカーブが投げられるというのか?
盤の裏側にその答を見出すことができる。
投手と打者のほぼ中間の位置に直径13mm、厚さ5mmほどの磁石がはめ込まれている。
もちろん磁石はその位置に固定されていて、動かすことはできない。
試しに鉄球を近づけてみると、ご覧のようにピタッと貼りついた。
つまり守備側がレバー操作によって故意に投球をコントロールするのではなく、投球が変化するかしないか、そしてその変化の度合いは、あくまでも偶発性に委ねられているということだ。
投球操作で行えるのはレバーの引っ張り具合を調節すること。
投球レバーを目いっぱい引いて離すと投球は磁石に影響されず、剛速球となって打者に届く。
逆にレバーを少しだけ引いてリリースすれば、投球はどう磁石の影響でどう変化してどのコースを進むのか、守備側でさえ予測は不可能だ。
しかし、攻撃側から投球レバーの引っ張られ具合が丸見えなので、少なくとも守備側が直球を投げようとしているのか、または変化球を放ろうとしているのかを目視確認することは十分に可能だ。
ツーショット
写真左がディズニー野球盤B型(以下DB型)、右は本機。
盤面サイズや捕球穴の構成がほとんど同じであることがおわかりいただけるだろう。
ただし筐体の素材の違いによって(DB型:成型プラスチック/本機:合板)、その留め方が異なり、それにより投球装置裏の角度がDB型では角丸のであるのに対し、本機は筐体の結合部が直角になっている。
なお、DB型における「勝手にカーブがかかる機能」も本機と同様だ。
恥ずかしながらDB型の稿執筆時点では「勝手にカーブがかかる」磁石機能に気づかずに見落としてしまったが、その機能は本機と同様であるということでご容赦願いたい。