ジャイアンツ野球盤BM型人工芝球場

昭和54年(1979)/エポック社

ジャイアンツ野球盤BM型人工芝球場 全景

人工芝球場

わが国において野球場に人工芝が導入されたのは昭和51年(1976)、後楽園スタヂアムが最初であり、当時は野球ファンのみならず、世間的にも大きな話題になったことを覚えている。

われらがエポック社がこの絶好の商機を見逃すはずもなく、後楽園球場の人工芝導入から3年を経た昭和54年(1979)、人工芝AM型に続いて本機が発売された。

もっとも、冷静によく考えてみれば、それまでの野球盤が自然芝を採用していたわけではもちろんなく(ジャイアンツ野球盤BM型には自然芝を表すシワ加工が施されていて思わず腰を抜かしたが)、基本的にはボール紙に緑色がプリントされていただけのことだ。

有名プロ野球選手やアニメなどキャラクターのみならず、人工芝さえも貪欲に利用して売上げ増につなげようとするエポック社の姿勢に、燃える商魂を感じざるを得ない。

で、人工芝を採用したことで果たして打球の速度やバウンドに変化が生じたのかを検証するために100球ほど試し打ちしてみた。

ジャイアンツ野球盤BM型人工芝球場 人工芝

これまでは打球が内外野をいつまでもゴロゴロと転がり、ポケットに落ちなくともそう簡単には止まることはなかった。
それが本機においては、ポケットに落ちないほとんどの打球は、人工芝の上で面白いようにピタリと止まってしまう。

打球が予想外の動きをしなくなったことがゲームにリアリティを与えたか、それとも逆にボールの行方を追いかける面白さが削がれたか、そのあたりについては意見が分かれるところだろう。

しかしいずれにせよ、打球が思わぬ方向に転がった挙句予想外のポケットに飛び込み、その判定を巡って激しい抗議や非難の応酬が飛び交い、挙句の果ては両軍入り乱れてお定まりの場外乱闘、という最悪のケースは多少なりとも減ったのではなかろうか。

ちなみに本機のサイズは43㎝×43cm、この2年前に発売されたジャイアンツ野球盤(45cm×45cm)より、若干ながら小型化されている。



ジャイアンツ野球盤BM型人工芝球場 レフトスタンドから見た光景

在・野球場感のリアリティ

先に述べたように、勝敗の行方に少なからぬ影響を及ぼすことになった人工芝グラウンドだが、盤自体に本物の野球場のようなリアリティを与えるという点においても、かなりの効果を上げているように思える。

実際のプロ野球選手の似顔絵や人気キャラクターたちが描かれたグラウンドを有する野球盤も、それなりに夢があって楽しかったが、本機のいかにも「本物の野球場」然としたたたずまいには畏敬の念すら覚える。



ジャイアンツ野球盤BM型人工芝球場 スルメ型選手人形

スルメ型選手人形がぶち壊し

そんな、いかにも本物の野球場っぽい雰囲気を漂わせる本機だが、残念ながら例のスルメ型選手人形軍団が、せっかくの素晴しいリアリティに水を差す、というより、もはやぶち壊していると言っても過言ではなかろう。

コストの問題もあっただろうが、なぜ本機に、この2年前に発売されたジャイアンツ野球盤B型にて復活採用された3D選手人形を再び起用しなかったのか?

これは何ら確たる根拠のない憶測にすぎないが、ひょっとすると同機の項において言及した「連続投球装置と3D選手人形に行く手を阻まれ、打球が外野まで飛びにくい=打撃戦になりにくい」点を改善すべく、3D選手人形に比べて面積の少ないヒラメ型を採用することで、少しでも打球を外野へ運びやすくする狙いがあったとは考えられないだろうか。

スムーズなゲーム進行には連続投球装置は不可欠なので、せめて「添え物」と言ってもいい選手人形を小型化することで、打球の外野への到達機会を増やすための苦渋の決断だとしたら、それはそれで充分尊重すべきと考える。

しかし「鑑賞対象」としての野球盤の美しさ・完成度を考慮すると、せっかく人工芝まで採用して野球場としてのリアリティにこだわったのなら、従来よりさらに小型化するなどして3D選手人形をグラウンドに立たせて欲しかった、というのが今となっては叶わぬ願いだ。

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