ジャイアンツ野球盤BM型

昭和52年(1977)/エポック社

ジャイアンツ野球盤BM型 全景
ジャイアンツ野球盤BM型 バックスクリーンの電光掲示板

オール成型プラスチック

昭和52年(1977)といえば筆者はもはや野球盤から遠く離れた不良高校生の真っ只中にあり、当然のことながら本機の存在をオンタイムで知るはずもない。

しかしそれからほぼ半世紀の時を経て、今こうして野球盤の歩みを黎明期から順に振り返っていくと、その進化は戦後日本、特に昭和40年代後半からの工業生産力の急速な発展と、ものの見事にリンクしていることに改めて驚きを禁じ得ない。

本機ではそれまで長い間ずっと厚紙製であったグラウンドまでもが、ついに成型プラスチック製へと華麗なる変化を遂げている。

ここに至って、野球盤の製造がそれまでの町工場(そうではないかもしれないが、あくまで個人的妄想)から、ついに巨大専用工場へと大きくステップアップしたかのような印象を受ける。

本題から逸れるようで恐縮だが、筆者が愛してやまない娯楽映画の金字塔「社長シリーズ」もまったく同様で、作品によって舞台となる会社の設定は毎回違えども、回を追うごとに社屋や社長室の内装が豪華に、そして現代的になっていくのに驚かされる。

それは戦後日本の高度経済成長を見事に体現している。
野球盤も然り。

ジャイアンツ野球盤BM型 バックスクリーンの電光掲示板

さらに驚くべきことには、グラウンドが従来の厚紙から成型プラスチックに替わったことで、緑色の部分に「自然芝」を表現する細かなシワが刻み込れているではないか!なんと芸の細かい。

それも、シワ状の薄いビニールを貼っているのかと思いきやそうではなく、緑色の部分のみシワ加工が施されていると知って腰を抜かした。
まったく、恐ろしいほど手が込んでいる、もう完全に脱帽。



ジャイアンツ野球盤BM型 復活した3D選手人形

帰ってきた3D選手人形

消える魔球・連続投球・ワンタッチヒッティング・ダイヤルカウンターなど、パワーメカフル装備が謳われれている本機だが、筆者が狂喜したのはあの「3D選手人形」の復活。

エポック社野球盤史上屈指の名機・デラックス野球盤において初めて採用された立体的造形の選手人形には大いに心踊らされたものだが、ほぼ同時期に発売された一連のオールスター野球盤シリーズでは一転、従来のスルメ型扁平選手人形に戻ってしまい、少なからず落胆させられた。

それが最大のヒット機種・野球盤AM型においてめでたく復活したのに続き、BM型の本機でも小型化された上で継続採用となった。

やはりスルメ型選手人形では今ひとつ「在・野球場気分」の盛り上がりに欠けようというものだ。

ただし、デラックス野球盤の3D選手は腰を低く落とした内野手4人と直立に近い外野手3人の2パターンに分けられているのに対し、AM型と本機で復活した3D人形は、内外野の区別なく中腰の選手の1パターンのみ。



ジャイアンツ野球盤BM型 ジャイアンツの選手イラスト

草野球チームとの対戦

ジャイアンツ野球盤と命名するだけあって盤面には読売巨人軍の旗やおなじみのYGマークが躍り、巨人軍のユニフォームを着用した選手たちがグラウンド狭しと躍動する姿が活き活きとしたタッチで描かれている。

しかしそのユニフォームには背番号がなく、加えて顔貌も陰影でぼかされているので選手を特定することはできない。

ジャイアンツ野球盤BM型 草野球チーム?スターズのコーチイラスト

また、1塁・3塁コーチスボックスに立つ攻撃側チームのコーチは見慣れユニフォーム姿で、胸には「Stars」とある。

どこかで聞き覚えのあるチーム名だと思ったら、野球盤CM型のグラウンドで「エポックス」と対戦していた草野球チームではないか。

栄光の読売巨人軍とはいえ、たまにはファンサービスでどこかの草野球チームと対戦することもあったのだろうか? まさか。

ジャイアンツ野球盤BM型 連続投球装置と左腕投手イラスト

連続投球装置の思わぬ影響

連続投球装置とはその名の通り、いちいち球を投球装置にセットすることなく連続して投球できる装置だが、実はこの装置が本来の機能とは別の、思わぬ効果を生み出している。

まっすぐに打ち返された球は、従来型機種だと一直線にセンター方向に飛んで行ったものだが、本機においては打球のほとんどが真正面にデーンと鎮座する黄色い連続投球装置にブチ当たり、本来飛んで行くべきセンターとはまったく別の方向に転がっていく。

従って本機においては打球がまっすぐセンター方向に飛んでホームランポケットに転がり落ちるという可能性はほぼゼロに等しい。

ジャイアンツ野球盤BM型 連続投球装置と左腕投手イラスト

加えて言うと、左右の外野目がけて飛んで行く打球の多くも、内野の守備位置についている3D選手人形に当って跳ね返され、内野グランドにポトリと落ちる。

この連続投球装置と3D選手人形をすり抜けて打球を外野に運ぶのは極めて至難の技であり、結果として1点を争うスリリングな投手戦になることが予想される。

しかし、それが打撃戦を好みがちな子供や少年たちに受け入れられたか否かは、今となっては不明だ。

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