ミスタージャイアンツ野球盤C型

昭和44年(1969)/エポック社

ミスタージャイアンツ野球盤C型 全景

C型三羽烏の一角

昭和42年(1967)に発売された「ミスタージャイアンツ野球盤F型」に続く、読売巨人軍の初代マスコットマーク・ミスタージャイアンツを盤面イラストに起用した第二弾。

■「巨人の星野球盤C型」(昭和44年/1969)

■「ディスニー野球盤C型」(昭和44年/1969)

と並んで、新たなキャラクター野球盤シリーズ」の一環として発売された。

筐体・サイズ・機能はもちろん、盤面デザインに関してもセンターバックスクリーン手前にある、丸く囲まれた主人公のアップまでもが他の上記2機種と同じで、キャラクター以外の独自性はこれといって見い出すことができない。



ミスタージャイアンツ野球盤C型 バックスクリーン手前の円形キャラクター

高度なマーケティング戦略

これはあくまで筆者の憶測にすぎないが、このC型シリーズ、エポック社はターゲットに応じてそれぞれのキャラクターを使い分けていたのではないかと思われる。

■野球に興味がなくとも、夢の世界のネズミやアヒルが大好きな子供たちを「ディズニー」で狙い撃ち、
■星飛雄馬が奮闘する漫画やアニメを夢中で見ている男児には「巨人の星」を用意し、
■読売巨人軍ファンや野球少年を販売対象とした「ミスタージャイアンツ」を、2年前に発売したF型に続いて起用する。

こうした、あまりにもスキのない、いわば「全方位販売戦略」は、当時としては画期的過ぎる「先進的ターゲット・マーケティング」といえるのではないか?

驚嘆すべきことに、エポック社は優秀な技術開発スタッフだけでなく、同時に類まれな天才マーケッターもおり、技術と営業企画の両輪がピタッと噛み合うことで「良い商品を作ってたくさん販売する」黄金サイクルを可能にする盤石の態勢が確立されていたことは疑う余地もない。

そして恐らく、その天才マーケッターとは、同社創設者で野球盤の生みの親・前田竹虎氏その人に違いない。
いやはや、凄い人がいたものだ。



ミスタージャイアンツ野球盤、C型とF型のサイズ比較

人気絶頂の読売巨人軍

とはいえ純粋にキャラクターを比較した場合、映画や漫画、テレビなどで動く姿が描かれることがほとんどないミスタージャイアンツは、世界的大スターのネズミや多くの熱いファンを持つ星飛雄馬と比較した場合、少なからず見劣りするように思えるかもしれない。

しかし当時の読売巨人軍の圧倒的人気の高さたるや、たいへん失礼ながら今日のそれとはまったく比較にならない。

長嶋・王の両スター選手をはじめとする常勝軍団は昭和40年(1965)から日本シリーズ9連覇という途方もない金字塔を打ち立て、当時の子供を含めた大衆に人気のあるものとして「巨人・大鵬・卵焼き」という言葉がもてはやされたほどだ。

その強さと人気の象徴として、このミスタージャイアンツも、わずか45cm四方の厚紙製のグラウンド上で、投げて売って走って守る大活躍を繰り広げている。

しかしながら「F型」と比較すると、盤面に対してイラストが小さくなった分、ともするとキャラクターの存在感が薄くなったような印象を受ける。

また「F型」において王選手を思わせる一本足打法を見せていて、筆者も思わず「王選手にいくらか払ったのだろうか?」などといらぬ世話を焼いた打者イラストだが、本機においては選手を特定できない、ごく一般的な構えを見せている。

それにつけても、嗚呼、昭和は遠くなりにけり。

…筆者の子供の頃、祖父母の年代に当る高齢者が「ああ、明治は遠くなりにけり」と嘆息していたのがまるで昨日のことのようだ。
なるほど、少年老い易く学なり難くメタボなり易し。

◆野球盤ゲーム一覧に戻る