ゲゲゲボウリング
平成8年(1996)/バンダイ
ブームから四半世紀を経た新機種
平成8年(1996)発売なので昭和でもレトロでもなんでもないが、ボウリングゲームのコンプリートに勝手に燃えている身としては避けて通れない。
全長約64cmと、ボウリングゲームとしては小型の部類に入ろう。
レーンの長さと幅のサイズバランスは、中~小型サイズのほぼすべてのボウリングゲームに共通することだが、長さに比べて幅が著しく広い。
本物のボウリングレーンのリアルなサイズバランスを追及するのではなく、オモチャとして楽しめることを優先した結果であろう。
ギミック満載
まずは何といっても鬼太郎の投球人形が目を引く。
とはいえ、現実には下駄ばきでのプレイが許されようはずもないので、ここは冥界のボウリング場という設定なのだろう。
ボールが目玉おやじというのがなんとも秀逸だが、そのボールが投球台にセットされる仕組みも独特だ。
手前隅にあるボタンを押し込むと、目玉のおやじボールが鬼太郎ハウスから飛び出て鬼太郎の足元にピタッとセットされる。
(このあたりの実際の動作は下記動画にてご確認願いたい)
このあまりにも斬新な仕組みは、往時のボウリングゲームには見られなかったものだ。
(ボタンを押すとレーンからボールが上がってくる装置はエポック社のパーフェクトボウリングシリーズに搭載されていたが、投球装置の上に自動でセットされるところまでは行かなかった)
ピンも普通のボトル型ではなく、真っ赤に燃え盛るような形状で、1本ずつ異なる妖怪の絵が貼られている、その名も「妖怪ピン」。
そしてピンセッターは、筆者が知る限りあの歴史的名機・パーフェクトボウリングカスタムに唯一搭載されていた「せり上がり方式」が採用されている。
現時点ではパーフェクトボウリングカスタムにおける「せり上がり方式」が特許あるいは実用新案登録されているのか未確認なので明言は避けるが、本機における「せり上がり式ピンセッター」は、カスタムのそれを、偶然、あるいは故意に拝借したと考えられなくもない。
いずれにせよ、この「せり上がり式ピンセッター」により、10本の妖怪ピンが地中からムクムクと(あるいはヨロヨロと)這い出てくるかのようなシュールな感覚を味わうことができる。
それはまさしくM・ジャクソンの大ヒット曲のミュージックビデオ大作「スリラー」における、地中に埋められた墓の中から蘇るゾンビたちを彷彿とさせる。
それ以外にも投球がガーターにならないためのガーターレスプレートが装着可能となっているが、これなどはボウリング本来の面白さから完全に逸脱したギミックの極みと言えよう。
隠れた歴史的名機
しかし本機最大の特色は、他のボウリングゲームの項においても何度か指摘した「投球スピード感」が本物のボウリングに比較的近い点。
■パンチアウトボーリング(トミー)
■ジャンボボーリング(マルハタ)
■パーフェクトボウリングカスタム(エポック社)
■ファミリーボーリングジャイアント(野村トーイ)
以上、筆者が勝手に命名するところの「ボウリングゲーム四天王」は、いずれも直径約25㍉ほどもあるボールが、レーン上を「ゴロゴロ~」とピン目がけて「ゆっくりと」転がっていく。
それはまさに本物のボウリング場でしか体現できない、あの独特なスリルと興奮、それに高揚感だ。
残念ながらそれ以外の小~中型ボウリングゲームは、どれもパチンコ玉のような鉄球が猛スピードで一瞬にしてレーンを駆け抜け(あるいは宙を飛び)、瞬く間にピンに激突する。
そこには上にのべた「ゴロゴロ~」という情緒のかけらも感じられない。
(いわゆる「滑り台方式」投球装置は「ボールぶっ叩き方式」に比べれば投球速度は幾分遅いが、実質的には大差ない)
ところが本機は、中型でしかもぶっ叩き方式にもかかわらず、投球速度は驚くほど遅く、レーン上のあの「ゴロゴロ~」という感覚を伴いつつ走り抜けていく。
どうやらその秘密は「目玉おやじボール」にあるらしい。
詳しいことは不明だが、同サイズのパチンコ玉状鉄球に比べると少なからず重い。
それにもまして、たとえ「ボールぶっ叩き方式」とはいえ、そこは親思いの鬼太郎のことだ、きっと見た目より優しく目玉おやじを叩いてからに違いない。
とはいえ、本機が発売された平成8年(1996)は、かつて日本中を熱狂の渦に巻き込み、わずか1年であっけなくその終焉を迎えたあのボウリング・ブームから25年も経過している。
平成8年(1996)当時、第2次ボウリングブームが起こったという記憶もないし、またゲゲゲの鬼太郎ブームが何度目かのブームを迎えたという話も聞いたことがない。
それならいったいなぜこの当時、ゲゲゲの鬼太郎を投球人形に起用した本機が発売されたのだろうか。
東映アニメのゲゲゲの鬼太郎 特設サイトによると、ちょうど1996年から第4期テレビアニメの放映が開始されたとあるので、あるいはそれにひっかけてバンダイが一儲けを目論んだのだろうか?
ともあれ、ゲゲゲの鬼太郎ファンにとっては、彼と楽しく遊べるたまらない逸品であろうことは間違いない。