ダイヤモンドクイーンズボーリング

昭和46年(1971)/ヨネザワ

ダイヤモンドクイーンズボーリング 全景

差別化の目的は

昭和46年(1971)にヨネザワから発売された本機は、商品名にわざわざ「クイーンズ」の文言を入れるなど、僚機「ダイヤモンドキングボーリング」との差別化を図っているように見える。
サイズは全長74cmは「キング」と同サイズだがレーンの長さは48cmと「キング」よりは5cmほど短い。
(その理由はレーン後方に「キング」にはない演出装置を設置したために思われるが、それについては後述する)

しかし仮にも「キング」との明確な差別化を考えるなら、同機とはサイズを変えるのが最善だと素人ながらに思うのだが、なぜかヨネザワはその手に打って出なかった。
あるいはそこに、当時わが国における平均的一般家庭の住宅事情を考慮した上での判断があったのかもしれない。

ダイヤモンドクイーンズボーリング グラマラスな投球人形

女子プロボウラー

「クイーンズ」の名が示す通り、投球人形にも女性が起用されている。

それも「キング」における絶望的なまでの悲惨な拵えではなく、スタイリッシュかつグラマラスな輝きを放っている。
長い手足も「キング」の、身を剥いた後のカニ脚のようにパックリ割れてはおらず、思わず見惚れるほどのスラリとしたプロポーションの持ち主だ。

本機が発売された昭和46年(1971)は、ご存知の通りボウリングが、突如として日本中を席巻した。
そのブームに大きく貢献したのが毎晩のようにどこかのチャンネルで放映されていたボウリング番組だが、その花形はなんといっても女子プロボウラーたちだった。

国民的スターとなった主役の中山律子をはじめ、貫禄十分の女王・須田開代子、強すぎる敵役・並木恵美子、どこか儚げな美人脇役・石井利枝、そしてキュートなアイドル・野村美恵子と、今振り返れば選手たちのキャラクターも見事に立っていたと言える。

(これはご本人には失礼極まりない個人的邪推に過ぎないが、並木恵美子があそこまで強すぎなければ、ボウリングブームはもう少し続いたのではないかと思えてくる。
それほどブーム絶頂期の彼女の連戦連勝ぶりは憎々しいまでに凄まじく、まさに「並木1強時代」であった。)

ともあれ、ボウリングブームを牽引したのが当時の華やかな女子プロボウラーであったことは間違いない。
本機はその人気に便乗、見目麗しい女性投球人形を投入することで、中山律子を広告に起用しながらなぜか投球人形は男性だったエポック社の代表的名機「パーフェクトボウリング」に、なんとかして対抗しようと目論んだのではないか。

ダイヤモンドクイーンズボーリング ピンセッター

お祭り騒ぎ

本機のピンセッターは「キング」と同じ、同社以外の多くの機種でも採用されている「後方反り方式」。
この方式は確実にピンをセットでき、その上シンプルな構造ゆえ、子供たちが少々荒っぽく使用したとしても、故障することはまず考えられない。

しかしその一方でこのタイプのピンセッターの操作は完全な「手作業」ゆえ、当時の昭和っ子たちが胸をときめかせた本物のボウリング場にあるようなオートマティックなピンセッターの「メカニカル(機械的)な」魅力には乏しい。

そこで、当時の玩具メーカ各社は独自の工夫を凝らし、当サイトでも紹介している
ニュービッグボウリング
ホームボーリング
エキサイトボーリング
ウルトラボーリングデラックス
パーフェクトボウリングカスタム」
などの高級機種において、魅惑のスウィーパー機能までもが搭載された本物そっくりの「メカニカルな」ピンセッターを競って開発、搭載することで、娯楽の殿堂・ボウリング場に憧れる当時の消費者の購買意欲を著しく刺激した。

ところが、なぜかヨネザワだけは、そうした「メカニカルな」ピンセッターには、まるで目もくれない。

筆者が知る限り同社のボウリングゲームは本機の他に「キング」それに普及版「ダイヤモンド(ベビー)ボーリング」合計3機種が展開されていたが、ピンセッターはどれもシンプルな「手作業+後方反り方式」を採用している。
(とはいえ、この「後方反り方式」も、野村トーイ「ファミリーボーリング」シリーズにおける、味もそっけもない「三角定規式」よりは、多少なりともメカニカルな趣きを感じることができた)

他社製品を研究し、複雑な動きのピンセッターに潜む機械的脆弱性を看破していたか、それとも逆にそのようなピンセッターを開発する技術を持たなかったか、50年以上が経過した今日となっては定かでない。

しかしそこは斯界の名門・ヨネザワ。
本機にはメカニックなピンセッターの代り?に、空前絶後、唯我独尊ともいえる恐るべきギミックが搭載されている。

ダイヤモンドクイーンズボーリング ピンセッター
ダイヤモンドクイーンズボーリング ピンセッター

10本のピンが立つ下にはそれぞれ突起が仕込まれている。
ピンが立っているとき、突起はレーンの中押し込まれているが、ピンがすべて倒されると障壁がなくなった突起がレーン上に顔をのぞかせる。

そしてそれがトリガーとなって奥にある電光掲示板?の王冠がギラリと光り、レーン裏面にあるスピーカーから、ファンファーレに続いて「やったー、やった、やった、ナイス投球、かっこいい!」という歓声が大音量で流れ出る。
(この仕掛けに要する電力は単一乾電池2本)

あたかも実際のボウリング場で一緒にプレイする家族や友人たちから
「ナイスストライク!」
「ナイススペア!」
と祝福されたかような心躍る高揚感に、ほんの一瞬だけ包まれる。

しかしそれも最初の2~3回だけのこと、慣れてしまえば王冠のライトは目にチカチカするし、ファンファーレや歓声もただただ喧しいだけだ。
いくらリアルなボウリング場の雰囲気を再現するためとはいえ、よくもまあ、こんな奇抜な演出装置を考えついたものだと、老舗メーカーの意地?が為せる離れ業に感心しきりである。

しかし、この唯一無二の圧倒的なまでの個性的なギミックが、果たして実際に本機の売上に多大な貢献をしたのか否か…残念ながらその答は歴史の闇の奥底に埋もれたまま、白日の下に晒される機会は永遠にやってこないだろう。

…やってこない方がいいに決まってる。

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